「選手にとっての指導者(コーチ)、子ども達にとっての大人の役割って何なんでしょう?」
私の場合、それはサッカーと通して、ニンゲンの成長過程に関わる事と定義します
子ども達はサッカーを通して、何を学び、自由と強制の中で、将来何を得たり、目標に対するプロセスでどんな経験をするのか。
なので、サッカーの原理原則はもちろんの事、人の成長について、脳の事や運動の原理原則、時代の流れなど多くの”知識”を要して、コミュニケーションを取ったり、トレーニングを考え、試合でコーチングやマネジメントをしないといけません。
そう考えると、現在の日本の指導現場にはジレンマを感じます。
なぜなら、これらの選手の成長を勝利至上主義にのみに則って、評価し優劣を付ける傾向にあるからです。
もちろん指導者も「子ども達の事を考えてる」と思いますが、そもそもその子ども達の生きてる、これから生きる時代と我々指導者が経験してきた時代では価値観がほぼ真逆だという事に気付いているのでしょうか?
もうニンジンをぶら下げても走りませんし、いかに”やりがい”や目的意識を彼らに与えてあげれるか、が大事になってくるのです。ならば、指導者の見るべきポイントは”勝利”ではない、正確には勝利以上の価値を見出せるか!?となります。
なので、目の前の勝利に対する執着では人は成長しませんし、もっと大事な事は山ほどあります。でも指導者がそこに気付きアップデートしていかない限り、目の前の選手が指導者を超える事はないでしょう。
どうしたら育成年代における”勝利至上主義”とトーナメント制の考え方から脱却するのか。もちろん制度なのでこれを決定する人が変わらないといけませんが、少なくとも現場で日々子ども達と相対する指導者らの考え方は、保護者も含めて考えないといけないと思います。
少年サッカーにおいての指導者の役割と考え方について-
ある事例と共に考えます。
2日間の大会で、初日に組んだチームではなかなか結果が出ず、選手達にも焦りや自信が見せず苦しんでいるのが分かります。
そこでコーチの取った手段は、2日目にほぼ全員の配置を変えて、「守備的」に戦うことでした。
元々攻撃的なチームで、守備は何とか失点を最小限に抑えられればというのが、ベースにありましたが、2日目にその守備へのテコ入れを行いました。結果、2日目の2試合で2連敗を喫し、予選敗退となりました。
ただ、私の考えでは元々の配置はそのままに選手間の「共通意識」を高めて、戦術・戦略的にある程度攻撃のパターン化や、個人戦術的に守備での約束事を明確にして、彼らの中に”不安”を取り除く事が重要だと思います。
開始10分前にメンバーが分かり、盤で駒を移動させて説明しても子ども達はチンプンカンプンだと思います。それは試合開始から明らかに頭でプレーしていて、反応や判断も遅く、技術的に精彩を欠いてるので明らかでした。
ではこの場合の戦術とは何か?
それは選手間のコミュニケーションに必要な、選手の特徴やフォーメーションなどの「情報」です。
そして、戦略とはそれを踏まえて、どう攻め、どう守る事が出来るか?少なくとも相手より早く知っている事です。
例えば、3バックの右ストッパーの選手は、中盤の選手が後ろ向きに受けた時の落としのボールを常にダイレクトで相手DFラインの裏に配給する事を狙っている。でもそれをFWの選手は気付いていない状態でした。
守備から攻撃の時や、相手ラインを下げる(陣地を取る)手段としてもとても有効だと感じ、2人と話しその事を整理させました。
試合前に指導者の出来る事はここまでです。あとは試合中に状況が変われば、次の手を打っていく。こうして、持っている技術を最大発揮するベースを作るのです。
要はできもしない事はやれないし、出来る事を最大限発揮する事こそ、「育成年代」で大事な指導者のマインドだと思います。
そうでなければ、自由を与えれば与えただけカオスを起こしかねないし、ガチガチに縛れば自ら思考しトライ&エラーで自らの物にするプロセスを経験できません。
ロベルト・バッジョのことば―
ただ、こうして色々な考え方の中で、様々なアプローチを行う中で、私はロベルト・バッジョが発した『今を戦えない者に、次や未来を語る資格はない』というのは、常に意識するのです。
よく日本の指導現場で見られがちなのは、結果を求めなくなった瞬間、サッカーから”勝敗”を完全に抜き取って考える事です。しかし、当たり前ですが子ども達(人)は自らの強さを誇示したいし、他人のゴールやチームの勝利を分かち合う事の喜びは非常に大事な成功体験となります。
このメリハリをトレーニングを通じて、コントロールできるのは指導者だけです。
なので決して、矛盾ではなくそれぞれの特徴をしっかりを理解し、その目的に対する手段の使い分けこそが指導者に求められるスキルになります。
このサッカーという非常に簡単なルール、原理原則の中で多くのアクションを促し、「体験」する事が育成年代と関わる指導者に託された使命でもあります。
